10月27日から30日にかけての公式発表から、押さえておきたい5件をまとめました。今回は新モデルの発表に加えて、ウェブサイト側がAI学習への姿勢を示すための共通ルールづくりや、料金プランの改称といった「使い方の決まり」に関する動きが目立ちます。性能数値などは発表元の公表値で、第三者による検証結果ではありません。その点も含めて読み取ってください。
AI学習への可否を、サイトが一括で意思表示できる仕組みへ ― OpenAIが共通シグナルへの対応を表明
ウェブサイトの運営者が「自分のサイトの内容をAIの学習に使ってよいか」を伝える方法は、これまでAI開発の会社ごとにばらばらでした。サイト側は各社のクローラ(自動巡回プログラム)の名前を調べ、それぞれに指示を書き分ける必要がありました。OpenAIは10月30日、この手間を減らすための共通の合図(シグナル)を、サイト側がアクセスへの希望を書いておく昔ながらのファイル「robots.txt」の中で尊重していくと発表しました。
合図の土台は、インターネット技術の標準化団体IETFの「AI Preferences」ワーキンググループで議論されている仕様です。AnthropicのKevin Kelley氏が10月30日に提出したドラフトでは、「__usage_ai-training」という共通の名前(ポリシートークン)をrobots.txtに書くことで、学習への可否をページの範囲ごとに表明できる設計になっています。新しい文法を足すのではなく既存のrobots.txtの読み方をそのまま使うため、対応しない読み手には従来どおり無視されます。OpenAIは、ワーキンググループの他の参加者も同日にこの共通シグナルを発表していると述べています。
注意点もあります。これは強制力のある仕組みではなく任意の意思表示で、仕様自体もまだドラフトの段階です(ドラフトの有効期限は2027年5月3日)。OpenAI自身、シグナルへの実装対応は「今後数か月」を目指すとしており、開始時期は未定です。また、これは「学習」への可否を示すもので、サイトへのアクセス(クローリング)自体を止める指示ではありません。各社個別の従来の制御方法も、引き続き併用できるとされています。
OpenAI、生命科学専用モデル「GPT-Rosalind-6」を承認制で提供
OpenAIは10月30日、生物学や創薬の研究を支援する専用モデル「GPT-Rosalind-6」の安全性評価(システムカード追加版)を公開し、承認を受けた研究機関向けの提供を始めました。中身は同社の汎用モデル「GPT-6 Astra」と同じ学習済みの本体(重み)で、追加の学習は行っていません。違いは、生物学の研究用途に照らした応答の調整と、利用を承認制に絞る運用の側にあります。
評価結果として、遺伝子データの定量分析を測る指標「GeneBench Pro」では、最も深く考えさせる設定での成功率が37.7%となり、前世代のGPT-Rosalind-5.5の16.7%から大きく伸びました(いずれもOpenAIの公表値で、この評価は本番環境とは異なる設定で行われています)。一方でOpenAIは、このモデルを自社のリスクの枠組みで「生物・化学」分野の能力が「高(High)」水準にあるものとして扱っています。一般公開のChatGPTモデルなら断るような、使い方によっては悪用にもつながりかねない生物学の質問にも一部答える設計のため、利用できるのは研究計画や管理体制の審査を通った組織に限られ、利用側にもアクセス管理などのセキュリティ対策が求められます。あくまで研究を支援する道具であり、病気の診断や治療法の有効性を示すものではありません。
Anthropic、Claudeの最上位プランを「Max」「Ultra」に改称 ― Ultraは5時間の利用制限を撤廃
Anthropicは10月30日、個人向け有料プランの名前を改めました。「Max 5x」は「Max」に、「Max 20x」は「Ultra」になります。料金は据え置きで、Maxが月額100ドル、Ultraが月額200ドル。既存の契約者は自動的に新しい名前のプランへ移り、手続きは要りません。
実質的な変更はUltraの側にあります。これまで各プランにあった「5時間ごとの利用上限」が、認証済みのUltraアカウントでは撤廃されました(週間単位の上限は残ります)。認証はアカウントや支払いの履歴などをもとに自動で行われ、利用者が申請する必要はありません。認証が済んでいないアカウントには、当面は一時的な上限がかかります。Maxの側は従来どおりで、5時間ごと・週間ともProの5倍まで使えます。Ultraの週間の上限はProの10倍です。プラン名から数字が消えたため、「何倍使えるか」は時間枠ごとに読み替える必要がある点には注意したいところです。
Google スライドのGemini、資料全体を一度の指示で編集できるように
Googleは10月30日、Google スライドのサイドパネルで使うGeminiが、複数枚のスライドや資料全体をまとめて編集できるようになったと発表しました。これまでは1枚ごとの指示が基本でしたが、全体の文面の更新、見た目の一括変更、別の資料のスタイルに全体を合わせる、複数枚を1枚にまとめる、といった指示を一度に出せるようになります。どのスライドを変更すべきかはGeminiが判断し、編集は通常のスライドとして直接反映されるため、取り消しや変更履歴もそのまま使えます。
対象は有料プランが中心で、Google WorkspaceのBusiness Standard/Plus、Enterprise Standard/Plus、個人向けのGoogle AI ProとUltraなどです。提供は10月29日から段階的に始まっており、全員に行き渡るまで15日以上かかる場合があります。当面は英語のみの対応です。Workspaceの契約者向けには、少なくとも2026年12月1日までは上限を引き上げたお試し期間が設けられます。
Anthropic、米政府向けClaudeの4割引を州・地方政府にも拡大
Anthropicは、米連邦政府の調達の枠組み「OneGov」を通じたClaudeの割引を拡大しました。Claude Enterprise、Claude for Government、Claude APIが定価から40%引きとなり、対象は連邦政府機関だけでなく、州・地方・部族・準州の政府にも広がりました。最低利用額の決まりはなく、使った分だけ支払う形です。この割引による政府側の節約額について、Anthropicは総額10億ドル規模になると試算しています(同社の試算)。
同社によると、すでに米国の連邦・州・地方あわせて約500の政府機関がClaudeを使っており、滞留した案件の処理、古いプログラムコードの刷新、ランサムウェアへの対応などに活用されているといいます。公共部門は予算と調達手続きの重さからAI導入のハードルが高い領域ですが、既存の調達の型にはめることで広げていく進め方です。なお、調達窓口となるCarahsoftとの連名発表は10月30日に行われました。
今日のまとめ
- 性能の競争と並行して、「学習データの扱い」「利用上限」「調達の型」といった運用ルールの整備が各社で進んだ
- 新しい仕組みの多くは「段階的な提供」や「承認制」が前提で、発表された時点では全員が使える状態ではない
- 専門性の高いモデルでは、能力の高さと引き換えに、使える人を審査で絞る方式が定着しつつある
※ 本記事は各社の公式発表をもとにした要約です。性能数値は各社の公表値であり、提供条件や時期は変わることがあります。正確な内容は出典の公式ページでご確認ください。